腹心の友と首相夫人、渦中の2人は口閉ざす 加計獣医学部新設問題 

 学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡る二十四日の衆院予算委員会の閉会中審査には、安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎・学園理事長(66)や、首相の妻・昭恵氏(55)の姿はなかった。加計氏はキーマン中のキーマンであり、昭恵氏は学園系列の保育施設の名誉園長に就任しているが、記者会見など公の場で何も説明していない。昭恵氏は、学校法人「森友学園」への国有地格安売却問題でも関与が疑われている。渦中の二人は今?

 「影の主役」は加計氏だった。

 「(加計氏と)特別な関係にあったのではないか」。閉会中審査で質問に立った民進党大串博志氏がパネルで示したのは、昭恵氏のフェイスブック(FB)に一時掲載されていた写真だ。加計氏や安倍首相がワイングラスを片手に白い歯を見せた一枚。食事やゴルフの交遊は二〇一三年以降、十四回に上る。

 安倍首相は「彼はチャレンジ精神を持った人物で、時代のニーズに合わせて、学部や学科の新設に挑戦していきたいという話は聞いたことがある」と認めたが、加計学園獣医学部新設計画については「(今年一月の)国家戦略特区諮問会議で知った」と説明。大串氏は「にわかに信じられない。加計隠しそのもの。加計氏の参考人招致、証人喚問を」と語気を強めた。

 野党は今回の閉会中審査で、加計氏と昭恵氏の参考人招致を求めたが、自民、公明両党に拒否された。

 疑惑発覚から約四カ月、加計氏は学園や系列校には姿を見せているようだが、メディアの取材には応じていない。学園の広報担当者は本紙の取材に「本日、理事長は対応しない。どこにいるかもお答えできない。学校を申請している立場なので、当面対応できないが、いずれ説明の場を設けるつもりはある」と話したものの、いつになるかを尋ねると「分かりません…」と言葉を濁した。

 この獣医学部文部科学省の大学設置・学校法人審議会で審査が続いている。開設の可否は八月に決まる見通しだが、愛媛県今治市の建設用地では来年四月の開学に向けた準備が着々と進む。学園のホームページ(HP)には「西日本の私立大学として初めての獣医学部を開設予定」と明記され、獣医学科百六十人、獣医保健看護学科六十人の募集を公表。二十三日には系列の岡山理科大岡山市)で受験生の父母らが対象の説明会も開かれた。

 「加計氏は今治市民の前で説明したことがない。やましくなければ国会でも地元でも出てくればいいじゃないか」と憤るのは、今治市民グループ今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表だ。

 今治市は三月、獣医学部用地を市土地開発公社などから約三十六億七千四百万円で買い戻し、学園に無償譲渡した。建設費の半額に当たる九十六億円を限度に県との補助も議決している。考える会は七月、「建築単価が高額すぎる」との公開質問状を加計氏あてに出したが、「回答できない」と断られた。黒川氏は「不透明な金の流れを加計氏に説明して」と訴える。

 郷原信郎弁護士は「加計氏の国会招致は不可欠だ。建設費が高額な理由や、安全設計が必要なバイオ施設の建設も計画する中で開学を急いだ理由、学校の財務状況について加計氏に問う必要がある。表に出て説明することができない者に、大学を開設する資格などない」と説く。

 閉会中審査で、野党は昭恵氏にも矛先を向けた。

 民進党今井雅人氏が「疑惑ある所に安倍昭恵夫人あり」と詰め寄ると、安倍首相は「国民から疑いの目を向けられるのはもっともだ。妻のことについても国会で誠意を持って説明している」と腰を低くした。

 昭恵氏は二〇一五年六月、加計学園系列の「御影インターナショナルこども園」(神戸市)の名誉園長に就任。森友学園でも、大阪府豊中市に建設を予定していた小学校の名誉校長を引き受けていた。ところが、疑惑については口を閉ざしたまま。唯一、意見を表明したのは自身のFBだった。三月二十三日、森友問題について「寄付金をお渡ししたことも、講演料を頂いたこともありません」などと反論するコメントを掲載している。

 その後、一時は講演会をキャンセルし、FBへの投稿を控えるなど活動を自粛しているかに見えたが、最近は「通常運転」に戻りつつある。

 ファーストレディーの活動は活発だ。首相動静によると、五日から首相のドイツなど欧州への外遊に同行。財界人らとの会食などにも同席している。

 FBも四月十八日に再開。華やかなファーストレディー外交や、熊本地震の被災地や医療機関への訪問、田植えの様子を数日おきに更新している。

 今月、昭恵氏の訪問を受けた事業所の関係者は「以前来ていただいた時と同じで明るい様子だった。特に変わったところはなかった」と印象を語る。

 昭恵氏の私的な講演や選挙応援などに駆り出されていた首相夫人付き政府職員はどうなったか。第二次安倍内閣発足の際には三人、一四年度からは五人も配置されていた。一方、安倍内閣は三月十四日に「(昭恵氏は)公人ではなく私人であると認識している」と閣議決定している。

 「『私人』である森友学園籠池泰典前理事長は証人喚問を受けたのに、公務員を同行させ、政府専用機で動いている『私人』の昭恵氏は会見すら開いていない」と憤るのは、森友学園問題を明るみに出した木村真豊中市議だ。

 木村氏は説明責任を果たすよう促す。「森友問題でもたとえそんなつもりはなくても、昭恵氏が動いたことで結果として籠池氏は望んだ以上の条件で国有地を得た。昭恵氏がどういう役割を果たしたのか究明するのは当然のことだ」

 渦中の加計氏と昭恵氏について、高千穂大の五野井郁夫教授(政治学)は「当事者である二人に聞けば一発で分かることも多いのに国会に呼ばないのは、(政権側が)身内に非常に甘いことを象徴するものだ」と指摘し、「ここ一、二週間が今後の日本政治のあり方を決める正念場になる」と強調する。「周囲は友達ばかりの門閥政治で、首相に近い人は守られるということ。必死に守ろうとする醜い姿を野党があぶり出すことができるか、官僚を味方につけて声を上げさせられるかどうか」

 (安藤恭子、木村留美